2017年12月3日日曜日

ヤマチクとHMVの師匠

先日、Sさんのところにいったら、音楽の話から新聞の切り抜きを持ってこられた。
金沢市の蓄音機館館長の記事だった。



「金沢でレコード店のオヤジだったけど、倒産しちゃって」と聞いて、ハッと思い当たることがあった。

金沢市で有名なクラシックレコードの聖地「ヤマチク(山畜)」だ。
全国のクラシックマニアのあこがれ。何でも揃っている所だったらしい。

12年前、突然、クラシックが聞きたくなった。『「指環」はどこにいった?』で書いたレヴァイン指揮のワーグナーの「ニーベルングの指環」のDVDを博多駅前のヨドバシ・カメラで買ったのがきっかけだ。
ワーグナーにはまると抜けられなくなると聞いてはいたが、ワーグナーどころか、先祖返りで、もっともっとと、バッハからモーツァルト、ベートーヴェンからショスタコーヴィチまで、高校でバド・パウエルを聞いてからジャズ・ピアニストになるんだと思ってから30年以上、クラシックから遠ざかっていた。レコード3000枚のほとんどがジャズばかり。クラシックなんてほとんど聞いていなかった。

最初は何から買っていいのかわからなかったが、もう、この時はCDのネット販売が始まっていた。
検索してみると、一番詳しいのがこの「ヤマチク」。金沢市にあった。組版でも曲名まで詳細に書いてあった。
一枚ものはHMVで買い始めたが、「ヤマチク」は断トツに詳しかった。
メールで問い合わせると高橋さんという店長の丁寧な対応が返ってくる。
よし、ここで買おうとチェリビダッケの33枚組のコンプリートEMIエディションからフィリップス・モーツァルト大全集180枚組など計938枚、DVD20枚の98組も注文したら、とてつもなく重いダンボール箱が送られてきた。2006年のことだ。
あまりにも買いすぎて、その後、ヤマチクからは買っていなかった。
そのヤマチクは3年後の2009年、店を閉じている。



その社長が、今は金沢市蓄音機館館長。
店には行くことはなかったが、この記事をみて、クラシックCDだらけのこの店舗にいるような気がした。

福岡にも、以前はかなり広いスペースで福原書店が経営するCD店や一時期、HMVも天神に進出して、クラシックコーナーがあったが、すぐに撤退した。

このHMVには、やたらマニアックなくわしい若い店員がいて、誰もが聞くような名盤より、あまり名は知られていないが、とてもいいものがあることを教えてもらった。
CDの封もきっていないのに、どこで聞くのか、何でも知っていて、やたら詳しかった。
今は超有名だが、ベートーヴェンとアルバン・ベルクのヴァイオリン協奏曲でレコード・アカデミー大賞をとったイザベル・ファウストもほとんど知られていない頃に、クラシック初心者の私に、ジョリヴェのヴァイオリン協奏曲がいいですよと勧めてくれた。ジョリヴェなんてほとんどの人が今でも知らないのに。よかったというと、次はシューベルトのヴァイオリン作品集を勧めてくれた。これも最高。
こんなにいい演奏をするのになんで知られていないのかと思っていたが、その後、あっというまにスーパースターになった。



話はそれるが、このジョリヴェ。ファゴット、フランスではバソンの協奏曲が有名で、前に同じマンションに住んでいた九響のファゴット奏者にジョリヴェのバソンコンチェルトはとても魅力的でいいと話したら、いたく感動された。(その後、のだめカンタービレでも取り上げられた)

閑話休題。先ほどのHMVのクラシックの師匠。ほかにポッジャーのモーツァルト・ヴァイオリンソナタや、ベートーヴェンのソナタ全集では(ジャン・ベルナール)ポミエが味わい深くていいなど、普通では考えられないほどのCDの存在を教えてくれた。



2005年8月に初めて天神のHMVでジョージ・セルのメンデルスゾーンを買ってから、1年後の2006年8月に、師匠は渋谷店に転勤になった。
たった1年間だったが、いろいろなことを学びんだ。この人に出会わなければ、クラシックのふところの深さは到底わからなかっただろう。
名前を聞いたが、声が小さかったので聞き返せなかった。残念。ありがとうございました、先生。

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