2017年11月23日木曜日

「指環」はどこにいった?

世界で一番売れたクラシック・レコードはショルティの「ニーベルングの指環」と書いたら、急に、「指環(リング)」(ニーベルングの指環のこと)が聞きたくなった。



「指環」は4日にわたって上演される大曲で、CDでも10枚以上、レコードだと20枚を超える。全曲聞くのに10時間以上かかる。

最初は、レヴァイン指揮のMETのDVDを買った。ヒルデガルト・ベーレンスのブリュンヒルデが素敵だったので、はまってしまった。

聞き始めると、たまらない魅力がある。トリスタンの媚薬を飲んだかのように、ワーグナーには口から手を入れられて胸の中を掻きむしって心に入り込んでくるような魔力がある。その魔力から抜けられず、たくさんの「指環」を買った。
ショルティ、フルトヴェングラー、クナッパーツブッシュはもちろん、ベーム、テンシュテット、バレンボイム、新潮オペラブックのマゼールも手に入れた。DVDもレヴァイン以外も何セットも揃えて、聞きまくっていた。

もともとは北欧神話からだと、友人が書いた『「ニーベルンゲン」の歌を読む』がいいよと知り合った大学教授に教えてもらった。


ショルティの「指環」の録音したいきさつを書いた、黒田恭一さんが訳したジョン・カルショーの「録音プロデューサーの手記」があることを知り、どうしても読みたくなった。
レコード盤に付録としてついているとわかり、オークションで手に入れたが、他のものがついていた。どうも、発売当初にはついていたらしいが。







幸いにも、福岡県図書館にあったので借りてきた。昭和四十四年一月一〇日の第二刷発行で定価1000円と巻末にわざわざ書いてあった。


復刻版が望まれてもなかなか出版されなかったが、「ニーベルングの指環 リング・リザウンディング」として山崎浩太郎さんが、2007年に新しく訳された。
山崎さんには、4年前、福岡アクロスにおいてコンサート形式で「トリスタンとイゾルデ」が上演された際、事前に4回にわたり、この曲に関してのレクチャーがあり、1回目に来られていたのでお話しすることができた。
この時は、直前に来日したチョン・キョンファの話になり、福岡公演が最高だった。東京はあまり出来が良くなかったと、チョン自身が語ったことを聞かせてもらい、幸運にも私もアクロスの演奏を聞いていたので、とても良かったと盛り上がり、「指環」の話はほとんどできずにサインだけしてもらった。

カルショーは幼いころからのあこがれのキルステン・フラグスタートにどうしてもレコーディングしてもらいたいのと、指揮はクナッパーツブッシュに頼みたいみたいだったが、だめで結局、当時若手のショルティで録音となった。
幸いにもフラグスタートは引退していたが、最初の「ラインの黄金」のフリッカ役で歌ってくれた。
ビルギット・ニルソン(ブリュンヒルデ役)はすばらしい。こんなに歌える歌手は今はいない。ビルギット・ニルソン自身が書いた「オペラに捧げた生涯」はユーモアたっぷりの話が満載だ。


男性歌手のヴィントガッセンやホッターまでこんなに豪華なメンバーは今後もできないだろう。
昔はオペラの主役級はみんなわがままで、気が向かないと簡単にキャンセルしまうことなどザラ。ショルティも大変だっただろう。カルショーも56才で亡くなったのはここで寿命を縮めたのかな。

なんて、思いながら、ショルティの「指環」を探しているのだが、見つからない。貴重な新潮オペラブックの「指環」もマゼールの演奏はいま2ぐらいだが、添付の本の内容がいいので捨てるわけないのにどこを探しても見つからない。
きっと、ニーベルハイムに行ってしまったのだろう。奴隷たちの魅力的なリズミカルな打撃音が聞こえるように耳を澄まそう…。

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