2017年12月8日金曜日

我が家のオーディオ④ ソナス・ファーベル

ジャズを聴いている間は、オーディオはあまり、気にしなかった。
コンパクトCDプレイヤー、真珠の入ったアコヤ貝のような持ち運べるものに、耳当てのスポンジ素材がすぐにポロポロになるゼンハイザーのヘッドホンで満足していた。

クラシックに凝り始めると、弦の音に興味が湧いてきた。
ピアノは音が違っても、自分で弾くので頭の中で想像できるが、弦の音を家で聞いてみたいという欲望が湧き出てきた。

昨年亡くなった宇野功芳と正反対で、双璧をなす音楽評論の異端児、許光俊の「オレのクラシック」を読んだ。

要約すると・・・。
CD評論で、オーディオについて語るのはタブーだ。オーディオ装置によって、CDの印象はいくらでも変わる。
編集者のダリという北欧のスピーカーと、オレのイタリアのソナス・ファーベルのコンチェルティーノで聴き比べをした。
スピーカーが違うと、これほどまでに変わるのか。これではもはやCD評論なんてバカバカしいと考えてしまうほどだった。
ソナスのスピーカーを使っている理由は、作っている人々が生の音楽をよく知っている気がするからだ。知っている限り、ソナスは生の印象に相当近い。
と書いてあった。

これにビビビッときた。ソナス・ファーベル!名前もカッコイイ!

ホームページを見ると、イタリアの雰囲気満載。弦楽器のニスの匂いまで感じさせるようなデザイン。
完全にノックアウトされた。

福岡のベスト電器の高級オーディオルームに初めて入った。
こんな世界があるのか。
客は誰もいない。ドキドキしながら、店員に声をかけ、持参したヴァントのブルックナーのSACDをかけてもらった。コンパクトCDプレイヤーやパソコンで聞く音楽とは完全に別世界。



立体的な空間が出現し、あたかもオーケストラが目の前にいるようだ。
楽器の音も別々にきちんと聞こえる。

その中にあった。「ソナス・ファーベル」の「クレモナ」。


※部屋が汚いので全景はお見せできません。

思ったよりも小さかった。
まわりにはJBLのスピーカーをはじめ、でかいものが所狭しと陳列されていた。

これで弦の音が聞きたい。というと、視聴用の長岡京室内アンサンブルのデビューというSACDが最適ですよと、鳴らしてもらった。
弦の艶やかな音はもちろん、弓の松脂でこすれる音まで聞こえた。衝撃的だった。
アンプはDENONの一番高いプリメインアンプだった。



許光俊の言うとおりだ。この人はすごいと感心したが、なにせ、異端児。
この章の初めにはCD評論なんてあてにならないと書いてある。

元来の探求心が首をもたげてきた。日航ホテルで行われた高級オーディオフェアに行ってみた。

ベスト電器よりさらに緊張した。来ているオタクたちが「S/N比は?インピーダンスは?」などとスピーカーの周りに集まって会話を交わしている。なんという異次元空間。頭がクラクラした。

時間が来て、柳沢功力さんの講演があった。スイング・ジャーナルや分厚いオーディオ高級雑誌「STEREO」でも有名なオーディオ評論家だ。色々な機種で、様々なCDをかけながら説明してくれる。

終わって、オタクたちが「さすが、柳沢先生だ」と話していた。オーディオのことは詳しくないので不安だったので、「会いに行きたいので一緒に行きませんか」と声をかけると「とんでもない。恐れ多くて」と断られた。
しかたないので、一人で柳沢さんに会いに行った。誰も近づかず、私一人だった。

柳沢さんとは、オーディオの性能とか特性などは皆目わからないので、こんな風な曲にはどんな機器がいいのかと、音楽の話ばかりしたら、わざわざそこにあった装置でエド・デ・ワールト(Edo de Waart)指揮のラフマニノフをかけて、初心者の私に、やさしく丁寧に応えてくれた。

話し終えると、オタクたちがどこからともなく寄ってきた。
「すごいですねぇ。柳沢先生と対で話されるなんて!」

ほかにも、ホーン型の中小企業の工場みたいなスピーカーが置いてある店にも行った。
ピアノのCDをかけてもらった。店の人に「どうです。すごくいい音でしょう。」にいわれたが、生の音とは程遠いものだった。
柳沢さんがオーディオマニアには、生の音を追求する人と、オーディオの音を追求する人がいると言われた意味がよく分かった。

スピーカーは「クレモナ」にしようと決めていた。
アンプにはプリとパワーがある。
高級オーディオフェアで柳沢さんが説明したゴールドムントのプリアンプとパワーアンプ。温かい音だった。ベスト電器できいたDENONのSA1よりさらに力強く、より艶があり、解像度も優れていた。
だが、プリとパワー、2つともデカい。置き場所も価格的にもあきらめようとした時、ゴールドムントが初めてのプリメインアンプを発売した。
デザインもクールで都会的だった。どこに行っても、プリメインは展示していなかった。
もう、頭の中ではゴールドムントが音を奏でていた。どうしてもほしかった。



覚悟を決めて、クレモナとゴールドムントのプリメインアンプとCDプレイヤーを購入した。
設置が終わり、長岡京室内アンサンブルのCDをかけてみた。
松脂の音は聞こえたが、クールで都会的な「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」だった。
SA1にしとけばよかった。



これでオーディオ遍歴はおしまい。

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