コルトレーンのしびれるようなソロが終わり、マッコイのピアノも実にいい。インパルス特有の録音のもここちよい。
これが終わると、ジミー・ギャリソンのアルコソロ、まさにコルトレーン・クァルテットの定番もの。
エルビンのドラムもバリバリ。
なんだ、この曲は?
ど、思っていたら、翌日の6月8日の新聞には、"コルトレーンのスタジオ音源、55年越しのリリース"と各社が取り上げた。NHKまでがニュースで伝えていた。
ジョン・コルトレーン「ザ・ロスト・アルバム」
この曲が録音されたのは1963年3月6日。
なんで、こんなにいい演奏がオクラになったのかというと、世界的に著名なコルトレーン研究家の藤岡靖洋さん曰く、録音日は名盤「ジョン・コルトレーン・アンド・ジョニー・ハートマン」の収録前日の63年3月6日。藤岡さんは「当時のコルトレーンの演奏は前衛的と思われ、理解に苦しむ人が多かった。より世の中に受け入れられやすい歌手ハートマンとの共演盤を先に発表したのではないか」(日経)と。
確かに大衆うけするのは、甘いベルベット・ヴォイスのハートマンにからみつく、コルトレーンのサックスの音色と演奏の方だろう。
1963年3月ごろのビルボードのヒット曲はポール&ポーラの「ヘイ・ポーラ」やカスケーズの「悲しき雨音」などだ。
ちなみに3月9日の1位はフォー・シーズンズの「Walk Like A Man」(なんと、邦題は恋のハリキリ・ボーイ)。
ポピュラーでは、こんな曲が流行っていたのに、コルトレーンはインパルスに録音するようになって「ライヴ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード」「インプレッションズ」とますます過激になってくる。
そんな中「バラード」は、アルトのキーのひとつが折れてはずれてしい、ありあわせのスプーンを折って、チューインガムとテープで補修し、その夜のラストまで、平然と立派なソロ演奏したパーカーに比べて、超神経質なコルトレーンがどうしても思った音が出なくて、バラードのアルバムを出したと言ったというが、どうも怪しい。
推測するに、エリントンとかハートマンの競演ものやバラードの方が売れると判断されたのではないか?
そして、売れたら、次はまた、本当にやりたいことをさせてあげるよと言われたのかもしれない。
これらがどれだけ売れたかわからないけど、次の年には「至上の愛」がつくられ、コルトレーンは、マッコイもエルビンもふるい落とされるほど、凡人では理解できない神の領域へと昇天(Ascension)してしまう。
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